はじめに

物語の題材

古代中国、約2200年前の戦国時代。この地には七雄(シチユウ)*と呼ばれる七つの大国があり、時に同盟を結び、時には裏切るといったことを繰り返しながら互いに覇を争っていました。そんな中、七つの国の中で最も西に位置し、かつて中央の国々から蔑まれていたは、天候や占いの力が政治の中枢に根深く残っている時代に、”法”による統治を強くすることで着実に国力を付け、次第に圧倒的な軍事力で他国に畏れられる存在となりました。この物語は、のちに始皇帝と呼ばれるようになる強国の王・嬴政(エイセイ)が、天下を統一しようと動き出す時代が舞台になっています。

そしてその時代、の片田舎で学問に勤しんでいた韓非(カンピ)李斯(リシ)
秦王・嬴政のもとで数奇な運命を辿った彼らを題材にして、 中国の歴史書『史記(シキ)』や、この時代の外交や権謀を集めた『戦国策(センゴクサク)』諸子百家(ショシヒャッカ)と呼ばれる思想家たちの書物に出てくるお話や、各地の言い伝えなどに、作者なりの調味料を加え発酵させながら、”誰かが伝えたお話”というスタンスでこのふたりの出会いから別れまでを描いています。
ふたりの行く末を既にご存じの方にもそうでない方にも楽しんでいただければいいな、と思います^^

[*]七雄=秦(シン)・楚(ソ)・斉(セイ)・燕(エン)・趙(チョウ)・魏(ギ)・韓(カン)
このほかにも小さな国がいくつもありますが最も勢力を誇ったこの七国を指します。

 

主人公

登場人物 李斯
李斯(リシ)
祖国:楚
生まれ育った上蔡で下級役人をしていたが、荀子に師事したのち、師の反対を押し切りへ赴く。時の権力者呂不韋に気に入られた彼は、即位したばかりの秦王・嬴政に仕え、やがて最も信頼される臣下の一人となるが…。
メモ:自意識過剰、口が達者で字も上手い根っからの役人気質。憎まれ口を叩くが誰にでも打ち解ける世渡り上手。友が少ない 韓非のことを本当に理解できるのは自分だけだと自負している。


登場人物 韓非
韓非(カンピ)
祖国:韓
の公子として生まれるも王や側近に疎まれるあまりを離れ荀子に師事することとなる。誰よりも弱小国・の将来を憂い祖国の役に立ちたいと願っているが、その才能はではなく敵国・に買われることとなり…。
メモ:自分の考えを記すことに全精力を注いでいる所為か、それ以外の事は割とだらしない。意志が固く引くことをしらない頑固者だが、弁論に優れる李斯に自分の理想を重ねる。